臭気判定士 嗅覚概論⑧ においの役割その2 フェロモンについて

臭気判定士嗅覚概論⑧ 臭気判定士

人は他の人の匂いを嗅いだ時に…好き!となってしまうこともあると思います。
しかし他の動物ではもっと嗅覚は鋭敏に作用し、行き先を誘導したり繁殖を促すなんてことも可能です。

今回は、そんなフェロモンなどのお話をしていきます。

ふぇのーる
ふぇのーる

フェロモン香水って一時期流行ったよね⌬

芳香ちゃん
芳香ちゃん

なんかモテる香水ってやつね?効果あるの?

そもそも好きでもなんでもない人から匂いもわからない謎物質が漂ってたって私の知ったこっちゃないよ。

ふぇのーる
ふぇのーる

辛辣ぅー⌬

じゃあフェロモンとかホルモンだかってそもそもなんなのかってところからちょっと勉強してみようか⌬

様々なシグナル分子

シグナル分子とは極微量で生物に対してなんらかの影響を与える分子です。代表的なシグナル分子は以下の様になってます。

フェロモン 
 動物や微生物が体内で生成し、外部に分泌し同種間の個体に作用して、
一定の行動や発育に変化をもたらす生理活性物質
 (性誘引フェロモン・道標フェロモン等)
ホルモン
 生体の外部や内部に起こった情報に対応し、体内において特定の器官で合成・分泌され、血液など体液を通して体内を循環し、自分自身の別の決まった細胞でその効果を発揮する生理活性物質
 (血圧を上昇させるアドレナリン、血糖を抑制するインスリン等)
・アレロケミカル
 生物の個体間に作用する生化学的信号物質のうち、異種個体間に作用する生理活性物質
(摂食阻害物質や摂食されたとき摂食者の天敵を誘引する物質、花粉を運んでもらうための昆虫を誘引する物質等)
・クオルモン
 細菌が菌密度に応じた振る舞いを制御するのに利用される細胞間シグナル分子となる生理活性物質
(菌が少ないうちは有害物質を出すのを抑えて大人しくしておいて免疫などによる妨害を避け、菌数がある程度増えたら一斉に攻撃を開始するなど細菌間の会話(情報伝達)するための物質)

様々なシグナル分子

嗅覚概論では、フェロモンに関する出題がほぼ毎年出題されるので、他のシグナル分子はさておきフェロモンについてのみ詳しく見ていきましょう。

においと性・種族維持(フェロモン)

ヒトは会話をすることが可能なので種族を繋ぐ・パートナーを見つけるという行為に対して、化学物質を利用して誘惑するなんて行為は一部の特殊な例(言及しません笑)を除いては見かけられない行動であると思います。

しかし、ヒト以外の動物ではにおい物質・化学物質が生殖に関与していることははっきりしています。雌雄を引きつける性フェロモンは多くの昆虫や一部の哺乳類などの動物にまで認められており、フェロモン無くしては種の繁栄はありえないほどです。

そんなフェロモンにもその用途によって種類があります。

リサーサーフェロモン

解発フェロモンとも言います。
他個体に特異的な行動を触発させるフェロモンです。哺乳類ではあまり研究が進んでおませんが、昆虫などでは多く見かける一種のコミュニケーションです。

縄張り行動

よく見かける犬が電柱におしっこをかける行動がわかりやすいかと思います。
ここは自分の場所だよ!ってにおいをつけて示しているのですね。
ネコも新しい環境におかれると、しきりと頬や顎を突起物にこすりつけたり、尿を後方に放出したりします。

犬やネコではどんな物質がフェロモンの効果を示すかまだわかっていない現状ですが、ヤギやマウスではその分子が解明されつつあります。

性フェロモン

個体が成熟して交尾が可能になったことを知らせます。人間の様に言葉で伝えられない愛の形を香り(フェロモン)で示すんですねステキ(詩的)

余談ですが嗅覚概論②においを感じる仕組みの項目でゴキブリの性フェロモンの話もちょっと書いてます。こんな感じで、本当に極々微量で効果があるのです。

道標フェロモン

小さい頃はアリなんかの列をボーっと眺めて(アリさんは一生懸命働いているなぁ)って思ってたりもしましたね。
 一生懸命列を作っていても、背中を追っているだけでは妨害や異変が起こった時に途切れてしまったりすると、餌がある目的地がどこで、どこに運べばいいのか分からなくなってしまうので、道標フェロモンを出して迷わない様にしているのです。
 アリの種類によってもその物質は違う様です。

下記論文では2種類のハキリアリの道標フェロモンを探索したところ下記の構造が見出されています。種が異なるだけで、違う物質を使って道標としているのですね。
非常に興味深いです。

道標フェロモンの例

参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/24/1/24_1_3/_pdf

この様な感じで、リサーサーフェロモンは同種間の個体に対し特定の行動を誘発しましが、個体の内分泌に影響を与えたり、体に変化をもたらす作用はありません。

プライマーフェロモン

起動フェロモンとも言います。こちらは、同種族の別の個体の内分泌に変化をもたらします。

女王物質

女王バチや女王アリの例なんかは有名な例ですね。女王バチが発散する物質により、他の雌バチたちは生殖能力を失い、働きバチとして行動する様にします。

面白いことに哺乳類でも同じ様なことをしている方達がいます。

ハダカデバネズミ

実物はちょっとショッキングな方がいるかもしれないので。。→ハダカデバネズミ

この子たちはこれまたショッキングな話ですが、
うん●を食べます。女王様のうん●様を食べるとあら不思議、雌は生殖能力を抑制され女王様の子供の面倒を見る様になります。

女王様のうん●様にはエストロゲンが含まれており、それがプライマーフェロモンとなり生殖抑制につながっていると考えられています。

ちなみに、女王様がお亡くなりになると、女王様の●んこ様を必然的に食べなくなるので、抑制効果が無くなり、また新たな誰かが女王様となりハダカデバネズミの社会は続いていきます。

参考:https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/09/20180906_02.html https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=14

性周期同調フェロモン

はじめに言うとこれは現時点では眉唾です。 よく、看護婦や女性兵士の寮(ドミトリー)で、入寮したときに異なっていた彼女たちの月経周期が、少しずつ変化を繰り返すうちに一致することが数多く報告されてました。
このことを「ドミトリー効果」と呼んでいます。
聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
 これも生理周期(内分泌)に影響をもたらすフェロモンの仕業だと考えられていましたが、2006年にZhengwei Yang とJeffrey C. Schank氏の研究により、同調する現象は確認されなかったとされています。また、2016年に排卵期予測アプリ『Clue』と英オックスフォード大学の調査により、相関がないことが示されました。
 両研究とも偶然のレベルでしか生理周期は一致しないとのことで、ちょっとロマンに欠けるお話となってしまっています。しかし、あくまで統計的な見方の論文ではあるので、その様な物質がないことの証明にはなっていない(悪魔の証明ですが)とは思いますので、この様な研究は続けられていくでしょう。

しかし、雌マウスの例では集団で飼育していると発情が不安定で、そうしたメスの群にオスのマウスを入れると発情が規則的になり、発情周期も同調してくると言う事例があります。このことはホイットニー効果といいます。この例では、雄マウスの尿中物質がフェロモンとして働いているのですね。

参考:https://medium.com/clued-in/the-myth-of-the-moon-and-menstruation-f85b151e45c3  https://link.springer.com/article/10.1007/s12110-006-1005-z

人間のフェロモン研究

以上の様に動物界では様々なフェロモンが研究されていましたが、はたしてヒトはどうなんでしょう?

プライマーフェロモンとしてのドミトリー効果は現在では懐疑的な結果に終わっておりますが、他人に好意をもたらすフェロモンは果たしてあるのでしょうか?

モテモテフェロモンってあるの?

以前より噂されている物質は2種類あり、魅力的な男性に思わせる効果があるとにおわせるアンドロスタジエノンと逆に魅力的な女性に思わせてくれる効果があるエストラテトラエノールがあります。
 このどちらとも検索すると多くのフェロモン香水やそういった製品に配合されていたりします。

実際に過去の論文ではその様な効果があることが示されている文献もありました。

参考:Berglund, H; Lindström, P; Dhejne-Helmy, C; Savic, I (2008). “Male-to-female transsexuals show sex-atypical hypothalamus activation when smelling odorous steroids”. Cerebral Cortex18 (8): 1900–8. 
Grosser, B (2000). “Behavioral and electrophysiological effects of androstadienone, a human pheromone”. Psychoneuroendocrinology.

ヒトフェロモン?

しかし、2017年Robin M. Hareなどによる研究の結果、この2成分は有意にフェロモン様効果を示さないことが突き止められてしまいました。

出典:Robin M. Hare, Sophie Schlatter, Gillian Rhodes and Leigh W. SimmonsPublished:08 March 2017https://doi.org/10.1098/rsos.160831

実験の内容はNews weekに纏められていますのでそちらもご確認ください。

人間は高度に言葉と行動でコミュニケーションを得ことができる生き物なので匂いで相手を意中にしようなんで浅はかなのかもしれませんね(笑)。
しかしながら、この2成分は効果が認められないとの結果になっていますが、まだ他にもフェロモン様効果を示す物質が見つかるかもしれません。

今後の研究に期待です!

赤ちゃんとお母さんのコミュニケーション

 赤ちゃんは当然ながら話すことができません。
しかし、母乳の匂いに反応し、母親の匂いを識別できるといわれております。
これは、赤ちゃんが羊水にいたころから嗅いでいたにおいを認識し、出産前に嗅覚学習が行われており、結び付けられているという仮説があります。
 フェロモン分子となる物質は発見されてはいませんが、においがまるでフェロモンのような働きをしていると言えますね。

参考:母子間における嗅覚シグナルJ. Japan Association on Odor Environment Vol. 46 No. 4 2015
Chemical communication and mother-infant recognition Commun Integr Biol. 2009 May-Jun; 2(3): 279–281.
Maternal and Paternal Perception of Individual Odor Signatures in Human Amniotic Fluid–Potential Role in Early Bonding?Biol Neonate. 1998 Oct;74(4):266-73. 

まとめ

・フェロモンは同種間の個体に対してごく微量で作用する
・ホルモンは自分自身の別の決まった細胞でその効果を発揮する
・フェロモンにはリサーサーフェロモン(解発フェロモン)とプライマーフェロモン(起動フェロモン)の2種類がある。
・リサーサーフェロモンは特異な行動を促す働きがある。
・プライマーフェロモンは、内分泌に作用する働きがある。
・人間ではフェロモンを受容する鋤鼻器は退化している。
・ヒトフェロモンは近年有力な2成分の効果が実証されなかったが、赤ちゃんは母親を認識することができるため、現時点では懐疑的とも言えるヒトフェロモンの研究は今後に期待
ふぇのーる
ふぇのーる

まとめるとこんなところかな?

ちょっと長く話過ぎた気がする⌬笑

芳香ちゃん
芳香ちゃん

フェロモンの話ってちょっと汚い話も多いね。

ふぇのーる
ふぇのーる

汗とか尿とかうん●とか。生物の利用できる匂いの話になるから仕方がないけど気分を悪くされたらすみません⌬

ふぇのーる
ふぇのーる

あ、ヒトフェロモン香水は結局眉唾っぽかったので割とショックだよね⌬ わかる~⌬!

芳香ちゃん
芳香ちゃん

人間やっぱり内面で勝負、そんな胡散臭い香水に甘えるなよっ!てことなんじゃない?

ふぇのーる
ふぇのーる

まだ他にもそういう働きの成分が見つかるかもしれないからそんなに否定しなくても…(デモ芳香ちゃんカッコイイステキ・・・⌬

コメント

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