どうも、流浪のブログ、fukublogです。
そして今回は、ちょっと高級なフレグランスに使われるネロリについて紹介します。
そもそもネロリって何?いい匂いするのはわかるんだけど何から採れた物なの?
そこからか!
ではどんな風に作られていくかちょっとみてみましょう⌬!
ビターオレンジの木から抽出される精油
レモンやオレンジと言った果物はそのまま食べるのもよし、皮を使ってピール漬けやマーマレードにするも良し、アルコールと炭酸水で割ってサワーにするもよし。いろいろなことに使えるので最高ですね笑。
一方ネロリはビターオレンジ(Citrus aurantium)と言われる柑橘から採取される精油です。
このビターオレンジ、名前から分かる様に苦味と酸味が強いため
あまり生食されません。
そして日本では別名では有名な柑橘でもあります。
その名も橙(ダイダイ)、お正月飾りぐらいでしかお目にかかれない柑橘ですね。しかし、この柑橘は食品産業、香料産業では捨てるとこがほとんどなく枝や葉っぱまで余すことなく使われます。
ビターオレンジの果汁や果皮は食品業界でジュースや天然香料として、枝や花もフレグランスの世界では重要な精油となりますね。図にしてみたのでご参考ください⌬
花から採れる精油の中で水蒸気蒸留で得られたオイル成分がネロリって言われるんだ。
枝や葉まで使われるなんて本当に捨てるとこが全くないね。
枝葉から採れる精油もビターオレンジから採取されるのはプチグレンビガラド、ビターオレンジとスイートオレンジの交雑種から採れるものはプチグレンパラグアイと言われていてより安価で現在では利用量が増加傾向にあります⌬
ちなみにネロリは約1tのビターオレンジの花から1 kgほどしか採れない非常に貴重な精油なので、生活の木(株)様のエッセンシャルオイルなんと1 mLで2500円もします⌬
いいお値段だね…
それでも嗅ぎたくなる高貴な香りって事で!
どんな匂い成分が含まれているか見ていきましょう⌬!
ビターオレンジの各部位の香り成分
ネロリの香りは元となる柑橘の甘酸っぱくて爽やかないわゆる果皮のCITRUSの香りとは全く違い、香調表現ではFLORAL, ORANGE FLOWERの香りと表現されます。
それぞれの成分の違いを表した論文が見つかりましたので少しみていきましょう⌬
この論文では、ギリシャで育ったビターオレンジの香気成分を分析しています。天然の物はその土地の土壌や天候などによりその成分は各地で微妙に異なりますが、ネロリと果皮、そしてプチグレンとの香気の違いが概ね感じ取れますね⌬
感じ取れません。
そんなはっきり言わなくても…⌬
全体的にみると、果皮はリモネンが95%でほとんどこの成分で構成されていて、ネロリやプチグレンと全く違うことが分かりますね。
ネロリとプチグレンではネロリドールやファルネソールなどのセスキテルペン 、メチルアンスラニレートなんかもネロリだけ検出されているね。実際に成分中のセスキテルペンの量を比較したものが下のグラフだよ⌬
セスキテルペンは分子量が比較的大きいため、モノテルペン類に比べ揮発しにくく、トップノートよりもミドル〜ラストノートで香りの役割を果たし、FLORAL感やWOODY感など様々な香りの核となります⌬
代表的な香り成分についてちょっと見ていきまっしょい⌬!
時代を感じるな…
ネロリに特徴的な香気成分
ネロリの花を特徴付ける香気成分について代表的なものを紹介していきます。
ネロリに含まれるセスキテルペン
ネロリドール
現在最も一般的に利用されているセスキテルペンアルコールで、わずかにGREENなWOODY,FLORAL様の香りを持ちます。天然にはネロリの他にもカブルバオイルには約70%〜80%含まれています。
フレグランスとしては、ミュゲ・ライラック・ジャスミンなどのフローラル系に使用させることが多い香料です。
ファルネソール
こちらも代表的なセスキテルペンアルコールで、ネロリの他にはパルマローザやペルバルサムなどに含まれ、菩提樹(リンデンブロッサム)の様の少し甘さを含んだWOODY,FLORAL感を持ちます。
フレグランスとしては、ミュゲ・ライラック・ローズ・バイオレット・シプレなどのフローラル、オリエンタル系に使用されることが多いです。
ゲルマクレン
あまり一般的でないセスキテルペンですが、ユズの果皮にも含まれていて、あの独特なWOODY感やSPICY感を醸し出す重要香気成分です。
ネロリにはδ-ゲルマクレンが、ペチグレンにはシクロプロパン環が形成されたビシクロゲルマクレンが含まれています。
エレメン
様々な植物で花のかおりに寄与しているセスキテルペンですが、虫のフェロモンにもなっており、甘さのあるLAVENDERやWOODY様の香気を持ちます。ネロリに含まれているのはδ体ですが、β-エレメンは、様々な薬用植物中に含まれていることからいくつかの種類の癌細胞に対して増殖抑制作用を持つことが示されています。
(臨床で使えるかは議論の余地があるそうです。)
その他の重要香気成分
メチルアンスラニレート
単品だとナフタレンの様な薬臭さや少し湿布薬の様なスッーとした香りを持ちます。
フレーバー用途だとブドウの果実感を与える非常に重要な香気ですが、ネロリやオレンジフラワーの香りを形成するためにも非常に重要な香気成分の一つです。
リリアールやコバノールなど少し分子量が大きめなアルデヒドと容易にシッフ塩基を形成してしまい、数日置くと鮮やかな蛍光色を呈してしまうため、色味が問題になってしまう製品を作る際には別の香料や合成品を使うこともあります。
インドール
上記の表には記載されてはいませんが、痕跡量程度には存在している物質で、高濃度だと糞臭を持ちますが、低濃度だとジャスミンの様な香気を持つ不思議な香料です。
フレグランスに加えると、優雅なANIMALICやPOWDERYな香調を加えます。
以上の成分より、ネロリの香りにはプチグレンにはないPOWDERY感や優しい甘さ、WOODY感など複雑で優雅な香りを持っていることが分かりました。
ネロリ様の香りを持つ合成香料
ネロリの香気を創作するのに、メチルアンスラニレートを使うと非常に再現よく作ることができますが、変色が問題となる製品などに使うためには、代替的に合成香料を使わざるをえません。ネロリ様の香気を持つ合成香料を数個紹介します。
ネロリンヤラヤラ(NEROLIN YARAYARA, β-naphtyl methyl ether)
ふざけた名前ですが、天然には含まれない合成香料です。(正式名はβ-ナフチルメチルエーテル)甘いネロリ様の香気を持ち、こちらも変色性はありますが、メチルアンスラニレートほどの激しい変色はありません。石鹸の香料に特に多く使われます。
ネロン(nerone)
比較的新しい合成香料で、プチグレン様・新鮮なCITRUS、GREEN感を持ちます。
安定で変色しないため、石鹸・洗剤化粧品用やオリエンタル、シプレ、ウッディタイプの香水の変調剤としても優秀な香料です。
香気はCIS体の方が優れているため、製品はCIS体を主成分とする混合物が出回っています。
ネロリオン(nerolione)
こちらもネロリ様の香気を持ち、持続性が非常に高く、匂い紙で3ヶ月以上保ちます。メチルアンスラニレートの約10倍の強度を持っています。さらに変色を起こしません。
フルーティ系の香料に加えると、軽い甘さと高級感を付与することができる安定な合成香料です。
ネロリの香りはやはり天然の物に勝るものはありませんが、合成香料でも再現するのに有用な化合物が開発されています。
今日本当は大三島の島香房ファーム様のオンラインネロリ体験があったんですよ…⌬
私は迷っていたら満席になってしまって参加できなかったので、現在のコロナ騒動が治ったら是非直接行ってみたいなと思いました⌬
迷う暇あったら即行動だねぇ
島工房様のサイトでも多数の柑橘精油やネロリが販売されていますのでよかったら皆様是非⌬!!
出典:香料と調香の基礎知識 中島基貴編
:合成香料 化学と商品知識 合成香料編集委員会編集
:Molecules 2013, 18, 10639-10647; doi:10.3390/molecules180910639
:https://www.ventos.com/index.php/en/producto/5252/NEROLIN+YARA+YARA
:https://www.takasago.com/ja/rd/times/archive/vol2.html
:https://www.fragrantica.com/news/Orange-Flower-or-Neroli-74.html
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