外出自粛が続いていますね。こんな時でも、気持ちは穏やかに、のんびりと過ごすことができればいいですね。こんな時は一つ花と触れ合ってみるというのも手ですよ。
家で花を飾ったり愛でたりすることで気分が和らぐかもしれませんね!
え?そんなことはない?そんなこと言わないでピエン🥺←(使ってみたかっただけです。)
今日は5月1日です⌬!
と言ってますが、もうそろそろ終わりですね…。もっと早く書きはじめればよかった(後悔)
5月1日はフランスではミュゲの日ということで、愛する人やお世話になっている人にスズランを贈る習慣があり、もらった人には幸運が訪れると言われます⌬
スズランは私が買いました。
スズランって青く爽やかで透明感や清潔感をイメージするいい香りがしますよね⌬ミュゲ調の香水している人は清楚なイメージもありますし…(ふぇのーるの勝手な解釈ですが)
今日はどんな香りかちょっとみてみましょう⌬
スズランの香気成分って?
はじめに結論を述べますと、スズランの香気成分を探索しようとしても、他の花などに共通する香り(linaloolやphenylethyl alcoholなど)成分しか見出されておりません。ですので、スズランの香気として特徴的な香り成分というのは未だ見出されていないのです。
精油も研究用に僅かながら採れることは採れるのですが生の花の香りとはかけ離れた香りになってしまうそうです。(もしお目にかかれたら教えてください!)
それにスズランにはコンバラトキシンなどの比較的水に溶けやすく250℃程度まででは安定な強心配糖体の猛毒(全草を水にひたした際の毒性はあのトリカブトのジキタリスを上回るとの報告も…)が含まれているため、水蒸気蒸留で抽出された精油なんかは口に入れないように注意が必要です。
スズランを生けた水にもこれらの毒は溶け出してしまうので要注意です。
重要な香気成分も量も採れなくて、毒もあるならあんまり精油作る意味なさそうね。
そうなの。でもその魅力的なスズランの香りと同じような香りをなんとかして探そうと調香師や化学者は現代まで頑張ってます⌬
スズランと合成香料
精油として採ることが非常に難しいスズランの香り成分は、現在でも合成香料によって構成されています。ミュゲ様香気を持つ合成香料の数例を紹介していきます。
ハイドロキシシトロネラール(hydroxycitronellol)
最初にスズランの香りを想起させた合成香料はハイドロキシシトロネラールでした。
その香りは、優しくフローラルなスズランの香りで、スイカのようなウォーターマリンっぽい面も持ち合わせております。
ハイドロキシシトロネラールは天然に存在しない物質で、1905年にドイツの化学者ハーマンノール(ノール社)によって初めて合成されました。その後、ジボダンはラウリンとして発売し、フィルメニッヒではサイクロシアとして、高砂香料ではラウリナールとして発売されます。
現在でも調香で多く使われる合成香料ですが、安全性と安定性の問題から化粧品中に1%以下でしか使用できなくなっております。(EU指令76/768/EECによってアレルゲンにリストアップされております。)
リラール(lyral)
こちらも、天然には存在しない香料ですが、ハイドロキシシトロネラールが安全性、安定性から規制が厳しくなったのに代わり代替が進んでいました。
ハイドロキシシトロネラールに類似した香りで甘くスズラン様の香りを持ちます。
リラールは1960にIFFによって特許が取られており、その後高砂香料からもコバノールとして発売され、時には年間1200 tが製造されるなど、最も成功した合成香料の一つです。
しかし、SCCS(Scientific Committee on Consumer Safety消費者安全科学委員会)から非常に強力なアレルゲンと判断されてしまったため、EUは19年8月から域内での販売を禁止し、21年8月からは使用も禁止することを決めています。
元々非常に有用で多くの製品に使用されていた香料だけに、香料業界は代替原料の探索に追われている現状です。
リリアール(lilial)
1952年、ロシア(ソビエト)の総合合成天然香料研究所のウラジミールロディオノフの研究グループが、лилиальальдегид(リリアルアルデヒド)と呼ばれる化合物を合成しましたがモスクワの調香師はこの化合物を受け入れなかったという歴史があります。
その後。1956年6月11日ジボダンがこの化合物の特許を取得し、略称が「リリアール」になりました。
石鹸や化粧品香料に幅広く使われている上、ミュゲノートの香水の核ともなるため、その製造量はバカになりません。ロシアがこの香料の有用性に気づいていたら少しだけ香料業界の歴史が変わってたかもしれませんね。
その香りは、少しグリーンアルデハイデックな香調のリリーフローラル様な香りを持ちます。反応性が高いアルデヒド基を持ちますが、皮膚に対しての安全性は比較的高いにしろ、人間の皮膚に対して微弱な感作性が報告されているため、使用量は1.9%以下に制限され、EU指令76/768/EECによってアレルゲンにリストアップされております。
ミュゲ様のアルコール類
以上3つの香りは、全てアルデヒド基を有しており、反応性を考えれば多く使えないことや、感作性がある事もうなずけます。
しかし、アルデヒドだけが、スズランの香りを持つとも限りません。アルコールでもスズラン用の香りを持つものはあります。
例えば、
マイヨール(MAYOL)は、少しグリーン感が強いミュゲ用香気を持ちますが、安定性が優れており、良くスキンケア様香料に用いられています。
マジャントール(MAJANTOL)は柔らかく強度のある新鮮なミュゲ様グリーンフローラル感を持つ香料です。こちらも安定性が良く、1%〜40%とかなり高濃度でも使用が可能な香料です。
ミュゲタノール(MUGUETANOL)は、少しワックス感のあるミュゲ様香調で、持続性が高く、ムエット(匂い紙)で10日間程度持続します。
現在でも多くの化合物が開発されておりますが、アルデヒド系のミュゲ様香料とはやはり少し香調が違う印象です。
このほかにも様々な香料原料がありますが、それはまた今度…
近年のミュゲ様香気開発の動向
歴史的にスズランの香りを構成する上で上記に挙げた様な香料は非常に優秀な香気を持っていましたが、近年ではアレルゲンと指定され、使用制限や使用禁止に追い込まれています。
規制が行われると代替の探索や処方を変更しなければならないため、香料業界はてんてこ舞いとなります。ですので、前もっての同等評価などが行われる現状です。
安全性を確認しながらの新たな香料原料開発は現在でも行われております。
例えば最近商標登録された高砂香料のBIOMUGUET®︎はEU指令76/768/EECの規制を突破し、従来のミュゲノートの香料の代替を果たすことが期待されています。
スズランの香りの香水
1913年に作成されたウビガンの Quelques Fleursの香りはシャネルNo.5と同じく、アルデハイデックな香調を持つ香水ですが、この時代に珍しいフローラルブーケの香調も持ちます。この香水はハイドロキシシトロネラールを使用しており、この原料の人気を加速させました。
また、最高の調香師として名高いEdmond Roudnitskaが作成したディオールのDiorissimo(1956)も有名です。トップノートにスズラン様の瑞々しい香調を持ちますが、ラストになるにつれて、ジャスミン様やサンダルウッドの香りも感じられ、素朴ながら清楚で上品な香りです。
天然のスズランの香りを求めて人はこんなにてんてこ舞いになるなんて奥が深いね⌬
香料に対して安全性を疑う方もいらっしゃいますが、香料は薬には及ばないものの、安全性試験や安定性試験を繰り返して開発されてます⌬
芳香ちゃんは現金ですね笑
最近はお花のサブスクを増えてるみたいなので、皆さんもぜひ使ってみてください。
出典:香料と調香の基礎知識 中島基貴編
:合成香料 化学と商品知識 合成香料編集委員会編集
:https://www.fragrantica.com/news/May-Greetings-New-Lily-Of-The-Valley-Aromachemicals-9014.html
:https://www.perfumerflavorist.com/fragrance/rawmaterials/natural/Takasago-International-Corporations-Biomuguet-477651423.html :https://www.otalab.co.jp/fragrance/archives/%E3%82%B9%E3%82%BA%E3%83%A9%E3%83%B3.html
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