どうもMr.Phenolです!
さくらの花が咲き始めましたね!
ここ最近はコロナウイルスのせいでお花見も自粛ムードとなっておりますが、お花見ができないのならばせめて香りを楽しみましょうということで今回は日本人が愛してやまない花『さくら』の香りを深掘りしていきたいと思います⌬!
みんながイメージするさくらの香り
はい。みなさん桜の香りをイメージしてください!
………
残念それは桜餅の香りです⌬笑 残念でした!!
とまではいかないものの、おそらく皆さんが想像する桜の香りは桜餅のあの優しくフワッとした甘い香りを想像することでしょう。確かにオオシマザクラの花はこのクマリンが大きく寄与しておりますので、花の香りとして間違いなく含まれているニオイです。ですので、あながち間違いではないのですが、あの香りは桜の葉っぱを塩漬けした時の香りです。この香りの主成分はクマリンと言われる分子で、確かに優しく甘酸っぱいような心地の良い香りがします⌬
私はこのクマリンの香りが結構好きなのですが、実は多量に摂取すると腎臓に毒性があるというデータもあります。そのため、日本では食品添加物として認められていないのですが、フレグランスにはよく使用される物質の一つです。
腎毒性があるというと少し聞こえが悪いのですが、日常的に多量に摂取しなければ問題ないと言われています。
東京都健康安全研究センターの報告 から、シナモン中のクマリンが言及されておりますが、バランスの良い食生活を送っていれば健康被害を起こすことはないとの結果となっております。
クマリンの香りを持つものは桜の葉や上記のシナモン以外にも、バイソングラスという干し草にも含まれており、その葉を漬け込んで作られたズブロッカというお酒からは桜餅の香りがほんのりと香ります。(私が大好きなお酒でもあります…⌬)
花の香気成分分析について
実際の花の香りを分析することは実は非常に難しい技術が必要でして、ヘッドスペースGC/MSやマイクロ固相抽出法(SPME)を駆使して分析して得られた結果通りに調合しても全然違う匂いとなってしまいます。
調香師の方々は花をとにかく嗅ぎ、調香を繰り返して実際に感じた香りと近づけることが一つの大きな仕事です。(もちろん全く新しい香りを創出することも大きな仕事の一つですが。)
とは言っても、一から香りを考えて調香することはほぼ不可能なので主要な成分分析は必要なのです。
そこで桜の分析できているさくらの香りの成分の一部をご紹介しようと思います。
さくらの香りの成分
さくらの香りは実際は品種によって大きく香りが異なります。
一般的には野生種と言われるヤマザクラや大島桜の方が香りが強い傾向があり、園芸用改良種でおそらく一番有名なさくらであるソメイヨシノは花の香りが弱いです。
そしてそれぞれのさくらも香りに特徴があります。
桜の香りを特徴付ける成分は、クマリンの他にも、フェニルエチルアルコール、リナロール、アニスアルデヒドなど様々な香気成分が寄与しています。それぞれの成分の特徴をみてみましょう!
フェネチルアルコール(ローズ P)
臭気判定士試験の嗅覚検査で出題されるにおい物質の一つで花の少しツンとするような甘い香りがします。
一般的にローズ感を持つと言われ、さくらのみならず様々な花に含まれており、香水などではフローラル感を出すためには欠かせない香りです。
アニスアルデヒド
少しスパイシーでその名の通りアニスに含まれております。さくらでは力強く甘いパウダリー感を与えるのに貢献してます。有機系の研究室なんかではよく薄層クロマトグラフィー(TLC)の発色剤として馴染みが深い物質ですね。
ベンズアルデヒド
こちらもパウダリーですが単品の香りは正に杏仁豆腐のあの香りです。バラ科の植物では共通する香りなのか生アーモンドの香りでもあり、甘く少しチェリー様の香気を持つとも言われます。
リナロール
ベルガモットやスズラン、ラベンダー様の香気をもち、穏やかなフローラル感と爽やかでグリーンなイメージを持つ香気成分です。フレグランスではナチュラルなフローラルグリーンのトップノートを与えるのに寄与します。
フェニルアセトアルデヒド
香料業界ではヒヤシンスアルデヒドとも呼ばれ、非常に力強いグリーン感と蜂蜜の様な少ししつこさのある甘い香りが特徴です。
フェニル酢酸
上記のフェニルアセトアルデヒドが酸化した構造をもちます。蜂蜜のあの少し動物感やDIRTY感を醸す出す香りです。単体では不快なにおいですが、ほんの少し含まれるとハニー感を演出できます。
この物質を少し手を加えてやると覚醒剤が合成できてしまうため、日本では覚せい剤取締法の対象物質であり、輸入、製造、販売、取扱い等には、厚生労働省の許可が必要です。また、その保管管理にも特別な設備が必要です。
パラクレジルメチルエーテル
クレゾールの部分構造を持つためか、少し薬臭い様な香りをもちますが、フレグランスとして調合すると、まるでカサブランカやイランイランの様なパウダリー感を持ってます。
クマリン
先述しておりますが、さくらの香りと言えばこの香りと思える様な香りがします。甘く、そしてほんのり甘酸っぱい様な優しく特徴的な香りは、春を思わせる香りです。よく香水ではオークモスの土の様な香りとこのクマリンを基本骨格をして調合する「フゼアノート」が有名で、男性的なそして幻想的な香りを醸します。
品種によっては花から直接この香りが確認できるものもありますが、多くのさくらでは塩漬けや熟成によって香りを放ちますので最初からこの香りがあるケースは実は少ないのです。
さくらはその他品種によってはバニリンやインドール、イオノンなどの成分などを持ち、痕跡量ではもっと複雑な香気成分たちで構成されておりますが、主要な香気成分ではないということで説明は割愛しますが、主にこれらの香気成分で構成されております。
クマリンの香りは花からはしないの?
クマリンはさくらの葉や花の中では匂いがしないo-クマル酸配糖体の形で糖分子と結びついて液胞内に隔離されているので匂いはしません。これを塩蔵したり傷つけることによって液胞外の酵素が反応して作られます。
植物の発する香気成分は虫からの食害から自身を守るためや逆に匂いで近寄らせようとする働きがあります。
多くのさくらの場合は普段はその武器を出さない様にしており、食害を受けたときに初めて「食べるんじゃねぇオラ!」と出しているのでしょうね?
植物により花粉を運ぶために利用する媒体が違いますが、さくらは虫媒花ですので普段から虫が嫌いな匂いを出していることがデメリットとなるためにこの様な進化をしているのかな?と思いました。そうだとすると非常に興味深いことでもあります。(ほとんどのハーブ類は最初から香りを出していますしね。)
どちらにしろ人間にとってはいい香りに感じるものなので健気で可愛らしいですね⌬
今回はさくらの花に含まれる主要な成分の話でしたが、次回は品種ごとの差やさくらの香りの香水についてみていこうと思います!
Mr.Phenolでした!
出典:香料と調香の基礎知識 中島基貴編 産業図書
:http://www2.odn.ne.jp/~had26900/constituents/shikimic_acid_pathway.htm
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