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前回は実際の海の香りについて話しましたが、今回は香水などに使われるマリンノートと言われる海の香りを紹介したいと思います!
突然ですが、海の中で一番数多く生きている生き物と言えばなんでしょう?
イワシ?クラゲ?いろいろいると思いますが、間違いなく藻類でしょう(植物プランクトンも含みます)。
この藻類は前回紹介した磯かおり、ジメチルスルフィドの他にも性誘因フェロモンとしてエクトカルペンと呼ばれる化合物類を放出します。
磯の特別な香り
この物質は果物の様な香りが感じられ、大量に放出される時期が来ると、海辺でその香りを感じとることができると言われております。(私はまだこの物質そのものの香りを嗅いだことはありません💦)
この香り自体も海の香りの一部だとすると、分子構造がよく似た分子でその上多くの人がが海の香りだ!と感じる香料分子があります。
カロン(calone)
この分子はエクトカルベンと同じ7員環構造を有しておりますが、一見薬品の様な形をしております。(分かる人には分かる…。かも)ですので、天然には存在しない分子です。
なんと、カロンは精神安定剤や抗痙攣剤として用いられる医薬品であるジアゼパムのより安価に合成できる物質を探索する途中で様々な物質を合成していく中で偶然発見されたものなのです。
カロンは香水会社Camilli、Albert&Laloue社の従業員J. J. Beereboom、D.P. Cameron、およびC. R. Stephensによって最初に合成されましたが、Camilli、Albert&Laloue社は1830年にグラースで設立され、同じ年にCotyに買収され、1963年にファイザー製薬グループの管理下に移されております。
カロンの名前は、この会社の頭文字とケトン構造からCamilli+Albert+Laloue+ketone+=CALone
と名付けられました。
様々なジアゼパムの類似構造の物質を合成していく中でこのカロンはスイカ様なの強い香りがする唯一のものでした。そのため、本来の用途(医薬品としてではなく)香料用途としてすぐに特許を取得し、基本的には花の調和のために微量で使用され、主にスズランの匂いを作り出すために使用されていました。
その後カロンは様々の香水に使われる様になり、マリンノートの代表格の香料としてかなりの量のCalone(1.2%)を含む最初の香水、Aramis New West for Her(1989)は、新しいマリンノートのトレンドとなりました。
(こちらの香水はfor Himは売ってるのですが、for Herは現在手に入らないみたいです…。見つけたら教えてください笑!) ↓*注 以下はAramis New West for Himのリンクです…⌬↓
さらに、特許切れとなったカロンは様々な企業がこの化合物の製造を開始し、今では同じ構造なのに(Aquamore, Watermelon Ketone, Ozonor, Ozeone)などその匂いの特徴をそのまま反映した様ないろいろな名前がついて販売されております。
その単体の匂いは私が表現するには「生牡蠣をツルッといった時に口に広がるあの香り」だと思います。
今ではマリンノートと銘打った香水のほとんどに使われていると言っても過言ではない物質です。
また、構造が似た類縁体も各社から製造されており、カロンよりも強いオゾニックなアルデヒド臭を感じられ、逆にあまり牡蠣の様な香りがしないキャスカロンや、よりフローラル感の強いトランスルゾンがフィルメニッヒから製造されました。また、香料業界ではウルトラズール(Ultrazur)というベース香料として購入可能なアズロンというものもジボダンから販売されております。アズロンはカロンよりも拡散性や持続性があると言われます。
カロンの香りが嗅ぎたい!
ほとんどのマリンノートの香水にはカロンやカロンの類縁体が入っていると思いますが、確実に入っていることは断言できません。(企業秘密ですしね…⌬)しかし、カロンの名前を冠した香水はあります。
グラースの香水メーカーLE LABOが発売した香水「Сalone17」(香りのキャンドルとホームフレグランス)です。
カロン単体のみで創られた香りではないようですが、ゼラニウムとアンバーのノートでカロンを生かし、オゾニックな香りで、サン・バルテルミー島の海辺の情景とそよ風をリビングルームに呼び込むようなイメージを持ちます。
現在香水は手に入りませんが、ルームキャンドルなら手に入るそうです。
アマゾンにありましたのでよかったらお試しください。
(海外からの取り寄せでその上すんごい高いですが…💦)。
カロンの骨格を持った物質は存分に海の香りを醸すのに役立ちますが、香水やフレグランスはこれだけの単純なものでは表現できないもので、他にも海の香りや青さを持つものを持った物質は多くあります。
その様な香りもこのブログの中で紹介できればと思いますのでまたお楽しみに⌬!
Mr.Phenolでした⌬!
出典:https://www.fragrantica.com/news/Calone-The-Air-of-the-1990s-8150.html
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