どうもMr.Phenolです。
今回から一旦森林から海に出向いて香りを探っていきましょう⌬
どんな香りが見つかるでしょうか?
磯臭い匂いの正体
突然ですが、海のかおりってどんな香りがする?と聞かれたらどんな香りを想像しますか?
生臭い魚の匂いや、赤潮のいやーな匂い全て海から来ていますね。え?いい匂いもあるかって?
大体生臭い様な匂いだと思いますが、魚を食べてる!いや、貝を食べてる!と実感するのはこの少し生臭い匂いを感じるからであると私は思います⌬
ではあの生臭い様な磯の香りって何が原因なのでしょうか?
磯の香りの原因物質
大きな原因物質は、トリメチルアミンとジメチルスルフィドの二つの仕業であると言えます。
トリメチルアミンは生臭い匂いの代表選手とも言える物質で、魚介類が腐敗するとアンモニアの様な生臭い香りははこの物質のせいです。
トリメチルアミンはコリンと呼ばれる人間でも細胞膜の構成と補修などに不可欠な栄養素が魚類の体内で浸透圧調整用の物質としてトリメチルアミン-N-オキシドとなり、それが分解(還元)して生成されるそうです。
出典:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13876048/
人間では、体内に取り入れたトリメチルアミンなどは最終的に毒性の低い尿素に代謝されて排泄されますが、体内で生成したトリメチルアミンがうまく分解されずそのままとなってしまう方も存在します。
外部リンク:トリメチルアミン尿症
コリンやレシチンなどのトリメチルアミンの前駆体物質(その物質が生成する前の段階の物質のことです。)が多く含まれる食品を控える事しか対処法がない病だそうです。
また、ジメチルスルフィドは希釈するとのりしおのような香りを持つ物質で、正に磯臭い香りだと認識する物質ですが、口臭の原因物質の一つでもあります。このような非常に強いにおいを持つ含硫化合物は、口腔内の細菌が、含硫アミノ酸(メチオニンやシステインなど)を分解することで発生します。
このふたつの物質は特定悪臭物質として悪臭防止法で規制されております。(臭気判定士のテスト範囲ですよ笑)
海や潮風の香りとは?
上記のふたつの匂いはいずれも悪臭物質でしたが、海に行った時の潮風のような爽やかな香りの物質ってないの?と思うかもしれません。実際に海に行って香りを捕集して分析にかけてもおそらく上記の物質の匂いなどが検出されるだけで、非常に難しい分析だと思われます。(実際によくわかっておりません笑)
そこでよく『海の香りを凝縮したような』だとか、『海の香りの精』だと言われる牡蠣と、潮の香りと言えばと言われ、潮の香りに重要な役割を果たしているアオサについてを例にとって海の香りに迫ってみましょう⌬
牡蠣のかおり
牡蠣のかおりはJosephsonらによってヘッドスペース法による解析により、30成分が同定されております。
この中でも、注目すべきは、(E,Z)-2,4-nonadienalと3,6-nonadien-1-olです。これらの物質は、単体ではキュウリやメロンのような瑞々しく青臭い香りを持つ物質です。以前にご紹介したキノコや金属のような香りを持つ、1-ociten-3-olなども含まれることからこれらの香りが絶妙に組み合わさり、正に『海の香りだ!』と表現できる香りを醸しているのでしょう。
アオサのかおり
最近ではコロナウイルスに効果があるとかないとか言われている渦中のアオサですが、これも潮の香りに重要な役割を果たしていると言っても過言ではありません。
アオサでは、(Z,Z,Z)-8,11,14-Heptadecatrienalや(Z)-8-Heptadecenalなどの長鎖アルデヒド類が多く見つかっており、アオサの生態系においてフェロモン様機能などの重要な生理的役割があるのではないかと言われております。
以上天然の海の香りをまとめますと、生臭いかおりや磯臭い香りとともに、爽やかな香りが組み合わさって構成されているということがわかりました。
香水などで、海の香りを表現する際のマリンノートと表現される香りは、実際にこの様な香りを用いて作られるのでしょうか?
次回はもう少し香水などのフレグランスに迫った海のかおりを語っていきます。
ではまた次回よろしくお願いいたします⌬!
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