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今回は嗅覚やその他の五感全てに適応する基本法則のウェーバー・フェヒナーの法則について解説していこうと思います⌬⌬ 臭気判定士試験では嗅覚概論だけでなく全体に関わっていく内容ですのでこの法則を理解しないと合格は遠ざかってしまう内容の一つですので頑張って理解しましょう!
少し数学的な内容も含まれますので苦手な方はお気軽にTwitterなどで質問いただければと思います⌬⌬!
ではやっていきましょう⌬⌬!
・におい物質の濃度とにおい刺激強度の関係は?
・におい物質の濃度とにおいの質について
・その他の知覚に関する法則
・濃度による違いで質が変わるにおい物質の代表的なものを覚えよう!
・その他の知覚に関する法則と、どんな関数を用いた法則なのかを知っておこう!
人間の感覚は数式で表すことができる?
味覚や嗅覚は化学物質が人体と反応して起こる刺激なので、化学的感覚と呼ばれます。また、刺された、光を見たもしくは音を聞いたなどの感覚、つまり触覚、視覚、聴覚は化学物質ではなくエネルギーを感じとるものは物理的感覚と呼ばれます。
これらの感覚の刺激量はと人間が直に感じとることができる刺激強度は法則が成り立つと言われております。
ここまででなんのこっちゃと思われる内容ですね。例え話をしてみます。
つまり、においの感覚で言えば、無臭の場所でおなら(化学的刺激)をしたらすぐにバレてしまいますが、草津温泉でおならをしたとしても多分バレませんね⌬⌬(汚い話ですみません…💦。)
ある程度匂いが濃いと、もうその差を検出することができなくなってしまいます。
これは嗅覚だけでなく、例えば聴覚でも、あなたが住んでいるところが欠陥住宅で、尚且つ静かなところに住んでいるのであれば隣の家のティッシュをとる音(物理的刺激)も聞こえてしまうかも知れませんが、国道1号線の沿いに家がある様なところではそんな音は全く気にならなく、バイクやトラックのけたたましい音しか聞こえません。
もし匂いの感じ方と濃度の関係が単純な比例関係にあったとしたら、生物は匂い刺激だけで卒倒してしまい、呼吸を止めざるを得なく窒息死してしまうかも知れません。ですので、ある程度匂いが強くなると感覚的に増減がわかりづらくなってしまうのは生物が身につけた身を守るための技術であるということもできます。
こんな日常に潜む刺激量と人間の感覚強度に対して、その関係性を関数により近似することができる法則を見出しました。
その一つがウェーバー・フェヒナーの法則です。(文献によってはヴェーバー‐フェヒナーの法則や、フェヒナーの法則と呼ばれることもあります。)
どんな関数か見てみましょう!
ウェーバー・フェヒナーの法則
早速どんな式で表すことができるかを見ていきましょう!
Y=k log10X+α (Y:感覚強度 k:係数 X:刺激量 )
対数が出てきましたね。このグラフをどう解釈すれば良いのでしょうかもう少し詳しくみてみます。
このウェーバー・フェヒナーの法則から先ほどのおならとにおいの感じ方の関係を読み取ることができます。
この法則はウェーバーの法則と言われる法則を元にして、フェヒナーが感覚量という概念を取り入れて数学的に導いたものです。
図にしてみます!
このグラフから、先ほどのおならの例を考えてみると、匂いがないきれいな場所でおならをすると、差の検知が簡単ですが(図のA)、元々硫化水素臭(おならの匂いの元)がするところでおならをしてしまった時は逆に差を検出することが難しくなる(図のB)、ということが青い点線の長さから確認することができますね。
この法則のグラフを片対数グラフに変換してもっとわかりやすくしてみましょう!
ここで、便宜的におならの匂いが充満している部屋の匂いの感覚強度を1と置いてみましょう。
おならの匂いが充満している部屋で、この匂いを機械的に97%除去してみましょう。
おならの匂いは感覚的にどの様に感じるでしょうか?
何と、97%除去してあげたとしても、感覚強度は約0.5、つまり約半分(1/2)になっただけでまだまだ臭いのです。
99%除去してあげたとしても元の匂いから約1/3程度ですので、これでもまだ不十分です。
このことは消臭除去の難しさを表していると言っても過言ではありませんね。
99%消臭を謳う消臭剤でも匂いの感覚としては1/3程度にしか感じられないということになりますので、実はそんなに大したことがない消臭剤であるということができます。
匂いの濃度と匂い物質の質について
ウェーバー・フェヒナーの法則から匂いの濃度と感覚量に差があるということがわかりましたが、実は匂い物質には匂いの濃度で感じ方が異なる物質が存在するのです。該当する化合物は少ないですが、以下の様な例があります。
これ以外にも、2種類以上のにおい物質が混ざり薄まったときに、構成するにおい物質がそれぞれ弱まるのではなく複合したときに異質の匂いとして感じられる場合もあり、その匂いの評価はにおい物質単体のそれぞれの匂いの評価でなく、総合した匂いの評価となります。この様な匂いの変化を複合臭といいます。
複合臭は例えば消臭剤などで悪臭と芳香が混ざり合い、悪臭が感じられなくなり総合的にはいい匂いと感じられる様にする技術として使われることもあります。
参考: https://products.st-c.co.jp/plus/question/answer/03.html
また、匂いの質は濃度差だけでなく、湿気や温度でも変化すると言われております。
その他の知覚に関する法則
悪臭分野ではウェーバー・フェヒナーの法則が使われることが多いのですが、その他の分野で使われる法則も紹介します(過去問で何回も出題があります)。
マグニチュード推定法
標準刺激と比較刺激を比較させ、その差の感覚的大きさを、数値によって直接的に推定させる方法です。
ある基準となる刺激の感覚量を10とした場合,与えられた刺激がいくつになるかを推定させます。
具体的には、8時間定時までみっちり労働して定時に帰るときの疲労感を『10』とした時に、+3時間労働した時は『15』、午後休暇をとった時には『5』などと答えてもらいます。(この様な比を考えることに意味を持たせる尺度を比率尺度といいうます)この疲労感は個人の尺度なのでどんな答えでも間違いではありません。このデータを集計しておきます。
この測定法での感覚量と刺激の相関はベキ関数がよく当てはまると言われております。
心理学の分野でよく使われる推定法で金沢大学の国際文化学科にコラムが載っておりましたので掲載しておきます。http://kg.kanazawa-gu.ac.jp/kokusaibunka/?p=2250
*地震のマグニチュードとは使用する数式が異なります。(地震のマグニチュードの式は対数関数です。)
スティーブンスのべき法則
ウェーバー・フェヒナーの法則が作られた後に、上記のマグニチュード推定法を元にして開発された法則で、物理的刺激の実際の大きさとそれを知覚する際の強さの関係を表す法則として実験を通して提案されたものです。
この法則は以下のベキ関数の式で表せられます。
J = k I p (J:心理量,I:刺激量,k:定数,p:べき数)
ベキ数pは刺激の条件により異なります。
これを簡単にグラフしてみました!
刺激によってずいぶんグラフが異なります。例えば、コーヒーの香りは濃度が薄いうちは鋭敏に差を感じとることができますが、濃いと感じとることが難しくなります(ウェーバー・フェヒナーの法則と似ていますね。)電撃の場合は、最初はあまり感じとることができませんが、強くなると少し強くなったのでも感じとることができる様になっております。(匂いと逆ですね。多分後半はどんどん我慢できない痛みになるのでしょうね〜⌬)
しかし、この法則は実験的に統計であてはめたもので個人差を無視しているとの批判もあります。実際に、 個々の被験者のデータを見てみると必ずしもべき法則が成り立っていないこともあるようです。
出典: Green, D. M.; Luce, R. D. (1974年), “Variability of magnitude estimates: a timing theory analysis”, Perception & Psychophysics15: 291–300
以上今回の内容をまとめてみます。
・マグニチュード推定法及びスティーブンスの法則は比率尺度を用いた’べき’関数で表現され、ウェーバー・フェヒナーの法則より多くの感覚量に適応できる。
・知覚に関する法則は実験により統計で個人のデータを平均し算出されたものなので個人の知覚とは乖離がある恐れがある。
というわけで、臭気判定士の試験の合格の全体を左右すると言っても過言ではない知覚に関する法則の概要を説明しました。嗅覚概論では知識的な内容のみしか出題されませんが、実技問題や悪臭測定概論などの科目では計算問題も出題されるため、」なんとか理解していただけたらと思います⌬
長くなりましたがまた次回よろしくお願いいたします!
Mr.Phenolでした!
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