今回は、木そのものの香りと森林の香りについて迫ってみようと思います。
香りというものは、文章を見るだけでは全くわからないので、つまらなくなってしまうと思うので、毎度この講座では、その香りの正体の構造式に触れてみています。
もし、森林浴してみたり木を実際に切った際の香りに触れ合うことができたら、こんな形をした物質が今、鼻を通過したんだ!と感動してみるのも乙な物ですね⌬⌬!
(こんなこと思うのは私だけかもしれませんが…⌬⌬。)
森林浴の効果
人間が心理的に心地よいか、はたまた気持ち悪くなったりするのには視覚や触覚ももちろん影響しますが、やはり嗅覚の影響があります。においが人間の心理的、生理的側面で大きな影響を及ぼすことは古くから知られていました。
森林浴がなぜ心地よいか。
清々しい木々の緑の視覚、心地よい空気、そして樹木の香りが森林浴のリフレッシュ効果をもたらすのですね⌬⌬
その効果は、深川ギャザリアクリニックの武田氏等により森林浴の健康増進効果として論文発表がなされております。
その論文によると、
森林浴が生体に及ぼす影響について 、森林より分泌される揮発性物質が主に 、嗅覚を介して自律神経に作用 し、リラグゼーション効果をもたらし、視覚などの他の感覚器官の情報を併せて交感神経の抑制やストレスホ ルモンのACTH 、コルチゾールの分泌抑制と免疫系の賦活化をもたらす可能性が示唆された。
と記載されておりました。
出典:リハビリテーションスポーツ 28(1), 30-35, 2009 医療体育研究会
こうなると森林浴の良さは計り知れませんね!
ではその森林のかおりとはなんぞや?というところに化学的に迫ってみようと思います!
フィトンチッド
森林浴といえばよく聞くこの単語、実はPhyto(植物)+cide(殺す)の造語です。植物を切断する際に放出することからこの言葉が作られたそうです。(ちょっと物騒ですね…⌬)
その正体は主にテルペノイドと言われています。テルペノイドは前回もチラッと紹介していますのでお時間がありましたらご覧ください⌬
こちらも、気象研究所の神山氏等により26森林から発散される芳香性物質についてという名の論文で発表があります。
出典:日本生気象学会雑誌 9(0), 32-32, 1973日本生気象学会
テルペノイド
テルペノイドはイソプレン骨格と言われる構造を生体内でパズルのように組み合わせたり、合体したりして作られる(生合成される)物質です。
イソプレンは生体内では二つのリン酸とくっついていて、こちらがまさにパズルのピースとなります。
テルペノイドの生成
生体内でのイソプレニルピロリン酸(右図)は酵素反応などにより、パズルのピースであるイソプレン骨格が移動したりします。そのピースの数により、どんなテルペノイドになるか、言い換えると化合物の将来が決定されます。
この中でも、におい物質として働くのはせいぜいイソプレンユニットが3つのセスキテルペンまでで、それよりユニットが多くなってしまうと、あまり匂いがしない物質となります。
具体的には、有名な抗がん剤であるパクリタキセルのような医薬品や、人参の色素であるカロテンなどといったそれはそれで非常に多彩な働きをする物質となります。
またテルペンユニットが、cis型でめちゃくちゃ長くつながると天然ゴムの主成分となります。こんな構造してるからゴムって伸び縮みするんですね⌬⌬
テルペンが好きすぎて脱線しました💦無限に語ってしまいそうです笑
それでは代表的な匂い物質をちょっとだけみていきましょう!
モノテルペン
イソプレンユニットが2つだけで構成されたものをモノテルペンと言います。
その多くの物質が香水ではトップノートに使われ、すぐに飛んでいってしまう軽いにおいを持っています。
また、その構造によって多彩な香りを持っており、いろいろな植物が進化の過程で得たと思われる酵素をフル活用して虫を寄せ付けないように防御したりと、正に武器として備えていると言っても過言ではないでしょう。
もしほんとに商物が武器や凶器として備えている植物の防御機構が人間たちには
ウフフいい香りー💕⌬💕<キャッキャ と思われてしまうのは植物はどう思ってるんでしょうね笑
モノテルペンの生体内での合成の一例としてリモネンの生合成のされ方をアニメにしてみました。
種々のテルペンたちもこのように生体内で酵素がいろいろな化学反応を担ってにおい物質を作っています。
というわけで、いつもは天然の生物や植物とそのにおいを紹介していくのですが、逆に代表的なものテルペンを紹介します⌬
リモネン
リモネンはその名の通りレモンなどの柑橘系果実に含まれるモノテルペンですが、なんと樹木や葉の香りにも含まれる成分です。
d体とl体の鏡像異性体が存在しましが、両方とも結構匂いが違います。d体は正にレモン!と言った香りですが、l体は針葉樹のような爽やかな香りがします。また、スペアミントにも含まれる香りです⌬
最近では発泡スチロールがみるみるうちに無くなっていくマジックをテレビか何かでみたことがありますが、おそらくこれを使用していると思われます。だからと言って体が溶けるやばい物質というわけではなくて、スチロールの構造と似ているから、混和しやすく溶けてしまうのですね。
また、ラセミ体(d体とl体が1:1で混ざったもの)もあり、こちらはジペンテンと呼ばれます⌬
ピネン
テルペン油や、ヒノキや松などにみられるモノテルペンです。その名も松(pine)が由来です。
2つの構造異性体が存在します。β-ピネンはα-ピネンに比べて清涼感は少し欠けますが、 ローズマリーやパセリ、バジル、バラなどに含まれています。 また、バスクリン株式会社の報告によると、 α-ピネン入浴では、細胞傷害性T細胞(CTL)活性が上昇したことが認められました。 このことから、免疫機能によい作用をおよぼしているのではないかと考えられます⌬
出典:バスクリン株式会社 香りと免疫のおはなし
カンファー・ボルネオール
日本語ではそれぞれ樟脳と竜脳と呼ばれております。非常に似た構造ですね。
カンファーはクスノキから採取される物質で、非常に爽やかな、そして刺すようなスースー感があります。
血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用、鎮痒作用、清涼感をあたえる作用があるため、湿布薬などにも使われております。
一方、ボルネオールの香りもカンファーと似ていますが、カンファーより少し弱く土臭いような、しかし和を感じさせる優雅さがある印象です。そして、このボルネオールの香りは意外と簡単に嗅ぐことができます。
それは墨の匂いです。
書道用の墨には実は香料としてこのボルネオールが含まれています。墨には膠という動物性の接着剤が材料として含まれていますので、その動物様のにおいをマスキングするために混入しているのだそうです。
墨を擦っている間に、このボルネオールの香りがして、精神的にリラックスして書道を始めることができるという理由でも使われてるようです。
天然にはボルネオ島などに分布するリュウノウジュやラベンダーから採れます。
テルペン類は殺菌効果に優れ、人に対してはリラックス効果も確認でき、 横浜市立大学の村田氏の研究では 大腸がんに対する抗腫瘍効果も確認されたとの報告もあります。
出典: https://kaken.nii.ac.jp/en/file/KAKENHI-PROJECT-25462069/25462069seika.pdf
そんな素敵な効果を持つテルペンが香る香水を紹介しようと思います。
AUX PARADIS (オゥパラディ) オム
AUX PARADISではマイナーな方の香りかもしれませんが、シトラスの香りとテルペニックな木の爽やかな香りは同じテルペンだからか相性がよく、最初は柑橘のフレッシュな芳香と官能的なオレンジフラワーの香りが強く感じられますが、次第に森林のようなセダーとサンダルウッドが香ります。
うまく作られてますね。
爽やかなメンズ向けですが、女性がつけても違和感は全くありません。
気になる香りの構成は以下のようになっております。
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このAUX PARADISの香水はほぼ精油で作られた香水が多く、合成香料が入っていても合成ムスクですが、このオムに至ってはラストノートにサンダルウッドが入っているためか、まさかのホントにすべて精油なのです。
気になる方はお試しあれ!!(公式サイト)
価格:590円 |
次回は今回紹介しきれなかったテルペンやセスキテルペンについて触れてみようと思います!
また、ぜひネタがありましたら是非Twitterにお寄せください。できる限り記事にしていこうと思います!!
それではまた次回お会いしましょう!!!!
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