どうも、Mr.Phenolです。
今日は嗅覚分子の中でも最大の分子量を誇る一群の動物性香料、ムスクの香りについて語ります。語っちゃいます。
動物性香料
香料として使用される精油のほとんどは植物由来ですが、動物由来の香料は古来より有名なものではたった4種類知られております。
マッコウクジラから採取されるアンバーグリス、ビーバーから採取されるカストリウム、ジャコウネコから採取されるシベット、そしてジャコウジカから採取されるムスクがあります。ムスクは香水だけでなく、柔軟剤やシャンプーといった数多くのフレグランスに入っていて、現在は欠かせないものとなっています。
ジャコウジカ
ムスクといえば香水にふれたことある方ならなんとなく聞き覚えのあるものだと思います。
人間からいい匂いのする分子なんてあまり発散されないとは思いますが、(実は近年の研究では若い女の人はラクトンと呼ばれる甘い快いかおりのにおい物質を発散しているという研究が知られています。)先ほど紹介したジャコウジカは体の一部分から芳しい香りを放ちます。
ジャコウジカはネパールやブータンなどのヒマラヤ山岳地帯からチベット、中国の雲南省や四川省などを中心に広く生息しています。そして、ジャコウジカは「鹿」と名付けられてはいますが、ジャコウジカ科の1属で、実は鹿とは違う生き物です。
wikipedeaのリンクから分かる通り、見た目は鹿に似ているもののサーベルタイガーの様な、結構立派な牙が生えてます。そして、芳しい香りはジャコウジカの雄にしかみられません。
麝香腺は陰部と臍の間にある袋状の器官で、雌を引き付けるために保有していると考えられています。
人間が採取するため切り取った直後は刺激性のある不快な臭いを放つそうですが、これを乾燥させ、エタトールで希釈しチンキとすると人を魅惑する香りとなるそうです。
※これは普通の鹿
ムスクの歴史
古来よりインドでは有史以前より、香油として身を清めるために使用され、中国では不老の妙薬として用いられていました。そして12世紀にはアラビアの王様からローマ皇帝に献上されたものの中に麝香が含まれていたという記述があります。
分析化学や有機化学なんて全くない時代から人々は感覚的に、そして官能的にその魅力を知っていたと思うとすごいですね。。⌬
ジャコウジカの乱獲
人間はエゴなもので、いい香りがする!モテる!高価!となるとすぐに乱獲をはじめます。このために、絶滅の恐れのある生き物としてワシントン条約により商業目的での国際取引は原則として禁止されました。
(中国では殺さずに採取する方法を編み出したっていう話もありますが、、、)
※これも普通のシカ‥ばね⌬
合成ムスクの台頭
ジャコウジカから取れなくなったんだったら作ればいいっしょ!と考える人たち。私は大好きです。
人々は新しいムスクの香りをするにおい物質を合成していきます⌬
ニトロムスク
1888年に、爆薬で知られるトリニトロトルエン(TNT)の改良を目指してアルベルト・バウアー氏は合成した図最左のムスクバウアーを合成しました。この化合物は、爆発性に乏しかったため、爆薬としては使えなかったものの、ムスク様な香りがすることから香料として売り出したところ爆発的💣に売れたそうです。
この後もニトロムスクは改良が進められ、いくつもの種類が製造されましたが、生物界での難分解性や生物濃縮の関係から問題があるとされ、日本では使えなくなっています。しかし、合成ムスク系では一番いい芳香を持つとまで言わしめております。
構造を見れば分かる通り、ニトロ基(NO2基)には爆発性があるため実は危険な物質です。だってほとんどTNTじゃないか⌬
多環状ムスク
1900年代に入るとニトロ基を持たない合成ムスクの開発が始まりました。インダン骨格を持つファンソリドやこれに次いでテトラリン骨格を持つトナリドが開発されました。
トナリドを開発した世界的な香料メーカー、ジボダン社が更に開発したベルサリドはソフトなムスクの香りをもつ多環状ムスクで広く使用されましたが、のちに神経毒性および色素脱出能があることが明らかになり、ベルサリドは香料としての使用は禁止されました。
今一番香料として使用されているムスクはおそらくイソクロマン骨格を持つガラクソリドだと思われます。
余談ですが、wikipediaのベルサリドの構造、間違ってると思うのでWikipediaに詳しい人直してあげてください(笑)⌬
大環状ムスク
これが天然物化学の醍醐味と言えるものでしょうか、今まではムスクの匂いがするということで、作られていた合成ムスク化合物ですが、ついに、1926年にレオポルト・ルジチカ氏により、ジャコウジカの香嚢から単離された化合物の構造が解明され、ムスコンと名付けられました。一度重要な香気成分が見つかればこっちのものとばかりに人の手で合成されました。大環状ムスクはムスコンの他にも、シベット中のムスク様香気成分シベトンや、アンジェリカの根から見出されるエクザルトリドや天然には存在しない大環状ムスクであるエチレンブラシレートが次々に合成されました。
これにてジャコウジカやジャコウネコなどの天然界の生き物は殺されなくても十分に同価値の香気を有する物質を得ることができました。めでたしですね!
ところで、天然からも得られる物質も多いこの大環状ムスク、構造式をネットに載っているものではなく、わざとこんな形にしてみました。
化学屋さんや生物化学屋さんならちょっとピンとくるかもしれません。
ステロイド骨格にかなり似ていることに気づくと思います。今回隣には、においがあるステロイドとしてアンドロステノンを並べました。
アンドロステノンは、人の汗にも男女問わず含まれており、その香りは人により千差万別で、尿の様な不快な、甘い、森林のような、花のようなにおい、あるいはバニラのような匂い・・・。と表現されるそうです。
この物質はヒトに対してもフェロモンとして作用する可能性が提唱され、特に性的誘引物質として働くのではないかと想像されていましたが、現在ではまだ科学的データに乏しい状況です。
お父さんの香りは嫌い😠!だけど彼氏の香りは好き〜😍っていうのはこういった化合物が影響してるのかもしれません。今はまだ詳しいことはわかりませんがね⌬
今の学説ではフェロモンを感じる鼻に存在する鋤鼻器は人間では退化していると言われてますが、そこに受容体があったとして、その受容体にムスクの様な物質が代わりにつき、いい匂いを感じるとフェロモンでなくても魅力的に感じてしまうのは本能なのか、それとも化学的に受容体が間違えてるのか・・・。真相は闇です。まぁそれでモテモテになればどっちでもいいんでしょうけどね!
匂いって不思議ですね⌬
Mr.Phenolでしたー!
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出典:香り -それはどのように生成させるのか- フレグランスジャーナル社
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